三角形の合同2分割
一か月半以上空いてしまいました。前回「もっと書かなきゃ」と言ったにもかかわらず、です。
とりあえず目標を下方修正して、まずは最低ひと月1記事を書きたいと思います。
さて、今回のテーマは、今月初めに開催されたロマンティック数学ナイトでの三好さんのプレゼン「図形パズル 双子カバリング問題の深淵」に関係するものです。
辺の比がである直角三角形の「双子カバリング」のはみ出し率の記録更新物語が非常に熱かったプレゼンでしたが、この問題を考える上で
そもそも、辺の比がである直角三角形は合同な2つの図形に分割できないのか?
という問いはとても大切です(もし合同2分割可能なら、はみ出し率が0パーセントになるため)。ロマ数の一か月前くらいに「みらいけん数学デー」にて私は三好さんらとこの問題を考え始め、その翌日くらいに「合同2分割できない」ことが証明できたので、以下、それを解説することにします。
というわけで、今日は次の命題を証明します。
命題:3辺の長さがすべて異なる三角形は合同2分割できない
ただし、ここでの合同2分割とは、”周長や頂点の数が有限である”2つの合同な図形に分割することを意味するものとします(フラクタル等は除いておきます)。
【証明】
背理法により、多角形による合同2分割の不可能性を示す。曲線を含む図形を考える場合は、直線部にだけ着目して同じ議論をすればよい。
3辺の長さがすべて異なる三角形が多角形により合同2分割できたと仮定し、分割の線が本の線分からなるとする。このとき、分割線は次の図に示す6つのパターンのどれかである。
しかし、分けられた2図形は合同なので、特に辺の本数は一致していなければならない。①の2図形は辺の数がそれぞれとなので不適。同様に、②、③、⑤、⑥についても辺の数が一致していないことがわかる。したがって④の場合しかありえない。
④の場合について、図のように、分割線の各線分の長さを(頂点の側から)とし、分割線と頂点を共有する2辺をそれぞれ、また分割線で分けられた三角形の辺の長さを(の側が合うように)とおく。
二つの図形の辺の数はともにだが、合同であるためには、この本の辺の長さ(構成)がすべて一致していなければならない。すなわち、
と
が”数の並べ替え”になっていなければならない(集合として一致しているかではなく、同じ数も別々に数えたうえで構成が一致しているかどうかに着目する)。
しかし、が双方に共通しているため、結局これを除いた
が数の並べ替えになっていなければならない(どの辺とどの辺が対応するか、については議論していないことに注意)。
つまり、
または
の場合しかありえないことになるが、前者の場合は元の三角形が二等辺三角形になるため矛盾。後者も三角不等式を満たさない(三角形がつぶれてしまう)ため矛盾。
以上で証明が完了しました。実はこれと同じ方法で、
奇数に対して、辺の長さがすべて異なる角形は合同2分割できない
ことが示せます。
では、偶数角形は…?ぜひ考えてみてください。