素数体操のコツとトレーニング
みなさんこんにちは。素数大富豪効果もあり、最近素数がブームですね。テレビのニュースでも毎日のように素数を見かけます。
この流れに乗ってメディアに取り上げられてもおかしくない素数コンテンツとして、鯵坂もっちょさんによって提唱された「素数体操」があります。
※知らない方は以下のリンクを参照してください
素数になるところの四股を曲げるこの体操はなかなか難易度の高いものです。
私は先日、トランポリンのある施設で素数体操を踊ってきました。
【 #素数体操 】トランポリンで踊ってみた【113まで】 pic.twitter.com/aZeV7zHKyh
— みうら@素数大富豪 (@miura_prime) 2017年3月10日
バランスを保つのが難しい!
素数の出現タイミングが不規則なためですね。
でもせっかくなのでもっと上手に踊れるようになりたい。なので今回私は、素数の性質と人間の動きの観点から、素数体操のコツを探っていきたいと思います。
さて、素数体操の特徴を考えるために、素数の性質(分布)と素数体操との関係を見ていきます。素数は不規則に現れるとはいえ、素数体操において重要な一桁目(一の位)については比較的わかりやすい特徴があります。以降、単に「①素数」と書いて、一桁目が1である素数を表します(③素数、⑦素数、⑨素数についても同様)。
【素数体操の特徴その1:同じ側の手足を同時に曲げることが多い】
もっちょさんも指摘しているように、右手右足を曲げる「①,⑦素数」、左手左足を曲げる「③,⑨素数」は頻繁に現れます。歩いているときのように手足の動きが逆の方がバランスを取りやすいのですが、「①,⑨素数」や「③,⑦素数」は少ない。素数体操が我々に与える最初の試練です。
※この記事での「右」、「左」の呼び方は曲げるべき四股の右、左とは反対になります
手足の同じ側を同時に曲げる際のポイントは、体幹をしっかり引き締めることです。腹筋、そして背筋で伸ばしているほうの手足をしっかり支え、もう一方の手足を素早く曲げる。体の軸がぶれないように注意しましょう。
【素数体操の特徴その2:四股はどこも、いつまでも使い続ける】
1,3,7,9は10と互いに素なので、ディリクレの算術級数定理*1より①,③,⑦,⑨素数がそれぞれ無限個あることがわかります。
つまり途中から使わなくなる部位はありません。体幹を鍛えたあとは両手両足をまんべんなく強化しましょう。
【素数体操の特徴その3:左手と右足は曲げる機会がやや多い】
「チェビシェフの偏り」というものをご存知でしょうか。
算術級数の素数定理*2より、①,③,⑦,⑨素数の割合は漸近的には25%です。しかしせきゅーんさんのブログに詳しく記述があるように、③,⑦素数は①,⑨素数よりやや多く現れます。つまり素数体操では、右手や左足よりも左手や右足を曲げる機会のほうが多くなりやすいのです。もし体幹と両手両足のすべてを鍛え終えたのなら、念のため左手と右足をで鍛えておくことをお勧めします。
…とはいえ、仮に1万まで素数体操を踊ったとしても素数の個数はそれぞれ
なので、ほとんど違いはないですね。10万、100万まで踊りたい上級者のための追加トレーニングといえるでしょう。
※100万までを1ポーズ1秒で踊ると約27時間47分かかります(MATH POWERには収まる)。
追記:算術級数の素数定理に関するインテジャーズの記事が公開されています。
最後に、普通の地面で踊る場合とトランポリンの場合とに分けて、補足を書きます。
(ⅰ)普通の地面の場合
両足を曲げるときにしゃがむことになるので、スクワットで足を重点的に強化しましょう。なお、両足を曲げるのは⑦素数と⑨素数が双子素数として現れる時なので、
は双子素数予想よりも強い未解決問題です。
(ⅱ)トランポリンの場合
場外に出ないように真上に跳び続けるのはとても難しいので、「次なんだっけ?」などと考えている暇はありません。またトランポリンは競技としては一演技で10個の技を行うので(私は上の動画では11回跳んでしまっている)、例えば『規定演技:800台』などと決めて素数体操に対応した10個のアクロバットを競うスポーツも面白そうです(四つ子素数なら抱え込み宙返り、素数砂漠なら伸身宙返り、その他未定)。
素数体操には素数の性質がいろいろ表れていることがわかりました。特に上記のせきゅーんさんの記事にはまだまだ素数体操のヒントがありそうです(記事の本題はむしろ特徴1「同じ側の手足を同時に曲げることが多い」に深く関係している)。そして何より、素数を覚えるために考案された素数体操が、素数の性質を体感する手段となっていることが大変面白いですね。
パズルと不定方程式 〜平面編〜
みなさんこんにちは。新年度いかがお過ごしでしょうか。年度が変わったときによく使う言葉に「新生活」というのがありますが、私にとっての新生活はまさにこのブログを始めた生活です。
最初の内容として書こうと思った記事はいくつかあるのですが、私が4月から入会したパズル懇話会の例会がちょうど一昨日あったので、今日はそこで発表したパズルを数学的に解説します。
こちらがその「台形パズル」です。最小単位をとしたときのピースの寸法は
こうなっています。ルートが登場するととたんに数学感が出ます(笑)
図のように、相似比の二つの長方形を同じ形で切り分けてできた6枚のピースで、一つの長方形を作るのが目的です。
ところで、平面のパズルと聞いたとき、もしかすると多くの方はジグソーパズルを思い浮かべるかもしれませんね。ジグソーパズルも形としては長方形を作るのが目的なので台形パズルと似ています。でも、この台形パズルのような「シルエットパズル」と呼ばれるタイプのパズルは、ジグソーパズルとは解き味が全然違うのです。
ジグソーパズルは、たとえば四隅のパーツを見つけた後、その隣に何がくるかは絵やピースの形から判断できます。四隅を決めて、辺のピースをつないでいき、中を埋める。少し言葉は悪いですが、そうやって時間の問題でジグソーパズルは完成します。
一方のシルエットパズルは、目的が「長方形を作る」だったとしても、まずどれを隅に置くべきかわからない。そして隅のピースを決めたとしても、その隣に何をどの向きで置くべきかわからない。場合の数が膨大で、試行錯誤だけでは解けないことが多いと思います。
そんなときに使うのが代数です。
たとえば、この台形パズルを解こうとして、図のようにまず一番大きなピースを左下の隅に置いたとします。
この次に、今置いたピースの相似形のピースを右隣に、このように置くと…
実はこれ、この時点で「詰み」なのです。パズルに慣れている方はもうお気づきでしょうか?
なぜこれではダメなのか。順を追って説明します。
まず、この6ピースを全て使って図形を作るということは、面積は必ずになります。
今は長方形を作りたいので、縦と横の長さをそれぞれとおくと
です。縦の長さは横の長さ以下、すなわちとしておきましょう。
ここで問題となるのが、やとしてどんな数を考えるかということ。もし整数だけを考えるのならの約数を考えればよく、「上での因数分解」をすることになりますが、今は違います。
そう、がいるのです。
の整数倍の長さの辺を使えるので、今は「上での因数分解」を考えるべきなのです。
まさに代数学。パズルを理詰めで考えようとしたときに数学が出てくるととても楽しいですね(個人の見解)。
さて、上での因数分解をするために、改めて
とおいて、方程式
を考えます。しかし困ったことに、上での因数分解と違って、この方程式には無数の解があるのです(ペル方程式に関する知識を用いて証明できます)。
それらの無数の解について議論するほうが数学的には有意義かもしれませんが、今はパズルに専念しましょう。何をするのかというと…
として考えます。今回の6つのピースには確かにが登場しますが、辺の長さを足し合わせて作れる長さは、「非負整数との非負整数倍との和」に限られます。やは作れないのです。
改めて問題を書くと、
変形すると
このようになります。もしここでだとするとの無理性に反するので
です(とは上一次独立と言っても良い)。
「」という条件が効いてきます。結局
となります。
のときは、のときはとなり不適ですので、あり得るのは
- (このとき)
- (このとき)
の2パターンですね。
これでようやく、前述の置き方がダメな理由を説明できます。すなわち、
長方形の一辺の長さとしてとの両方が登場するはずがない
のです。6ピース全部を考えると、
この図の赤の辺と青の辺を並べてはいけないことになります。
なお、一番大きなピースはどの向きで置いても幅が以上なので、最終的に以下の4通りまで絞れます。
この中で二つ、実際に長方形を作れる比率が存在します。
みなさんぜひ、厚紙などで作って遊んでみてください。また私は火曜日のみらいけん数学デーに毎回このパズルを持って行っているので、そのときに声をかけていただけると中の人が喜びます。
数学を使ってパズルを考えるのは本当に面白いです。実は一昨日私が発表したパズルはもう一つあるので、それについてもいずれ記事にしたいと思っています。
それでは今日はこの辺で。みなさん新生活を楽しんでください!
ブログを始めたp個の理由(p=2)
初めまして、みうらです。代数とパズルと素数大富豪が好きな院生です。
もっとも、この最初の記事を見てくださっている方の多くは、数学のイベントでお会いしたことのある数学仲間かもしれませんね。
私は今日初めてブログを書いているのですが、ブログを始めた理由は主に二つ。今回は私がブログを始めたきっかけと、今後書いていきたいと思っていることについて、簡単に記しておこうと思います。
2016年10月5日。私の学生生活に転換点があるとしたら間違いなくこの日です。
MATH POWERという数学のイベントで、素数大富豪大会が行われたこと。その決勝戦で私の出した1021が素数だったこと。これがすべての始まりでした。
私は素数の力を借りて、数学のイベントを楽しむ機会を得ました。そして今日までの半年間で、こうやってブログを書こうと思うまでになりました。界隈のみなさんには本当に感謝しています。
さて、私がブログを書こうと思った理由ですが、簡単に言うと
-
考えることが好きだから
-
数学を楽しみたいから
の二つになるでしょうか。
まず、考えることが好きなのは、私が数学を専門として学んでいるからなのかもしれません。数学という学問には考えたくなるテーマが本当にたくさんあります。そして、数学的な背景を持つパズルを考えたり作ったりするのも大変面白い。常に何かを考えていたい私にとって、数学やパズルはとてもありがたい対象になっているのです。
でも、数学そのものを考えることだけでなく、一見数学とは関係の少なそうなことを数学的に考えるのも非常に楽しいです。数学の世界とは違う世界(パラレルワールド?)の出来事だとか、数学とは反対側(パラ)の存在だと思っていたことを、数学的に考えることができたとき。そのエキサイティングさも数学の醍醐味だと思っています。そういう経緯でブログの名前を「ますぱら」にしました。マスハラじゃないよ。
もう一つの理由「数学を楽しみたい」については、まだちょっとふわっとした感覚です。
この半年間で知り合うことのできた数学界隈の多くの方はブログを書いており、数学の話題でもそうでなくても、日常のいろいろなことを面白くしようというエネルギーにあふれています。私も今回ブログを持つことを通じて、自ら日常を面白くしたい。数学的に楽しめる空間を作りたい。そう考えています。自分だけではなく界隈の方と一緒に楽しむ数学を生み出す基盤にしたいという意味で、数学を楽しむブログを書いていきたいです。
最初だからか、どうしても文章が堅苦しくなってしまいました。でも文章ばかりの記事は今日くらいでしょう。
このブログではこれから、代数(特に素数とか)の話、パズルの話、素数大富豪の話などを書いていく予定です。まだ不確定要素も多いですが、少しずつ軌道に乗せていきたいと思います。
素数が被ってる?大事なことなのでp回言っただけですよ。
それでは、今日の記事はこれくらいにします。内容的には次回が1つ目の記事といったところでしょうか。そすうるとこれは0番目の記事ですね。0は自然数派の方の気持ちがわかったかもしれません。
誤字ってる?大事なことなのでp+1回言っただけですよ。